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[ その他の雑記 ] 雑魚戦に陽を当てよう

2024-12-10 00:00:27

本記事は「ツクールアドベントカレンダー Advent Calendar 2024」12月10日分の投稿記事です。

ところで皆さん、RPGの雑魚戦は好きですか?

私は好きです。

でも残念ながら、好きという人は少ないかもしれません。

今回はそんな雑魚戦について考察してみました。

雑魚戦とは

RPGにおける雑魚戦とは、ボス戦の対極にある戦闘のことです。

何度も繰り返され、通常はそこまで苦戦することもなく、長くとも数ターンで勝利できます。

大して苦戦もせずに勝利できて、しかもそれが何度も繰り返されることから、単なる作業になっている感覚が強く、雑魚戦が面倒だという声はよく聞かれます。

実際、最近のRPGではシンボルエンカウントが主流になり、雑魚戦を避けることが容易になりました。

さらに味方の戦力が明らかに勝っている場合は戦闘シーンを省略できたり、エンカウントキャンセルのような仕組みが採用されたりと、極力雑魚戦をしなくて済むようになっています。

しかし、戦闘は本来RPGの一番メインの要素と言っても過言ではありません。

実際に、あの手この手で雑魚戦を回避できるようにしておきながら、雑魚戦自体を無くしている作品はあまりありません。

忌避されつつも、雑魚戦自体はRPGに不可欠な存在と見なされているのです。

そんな忌避されがちな雑魚戦を少しでも面白いものにするために、自分が行っている工夫を述べてみました。

雑魚戦の役割

そもそもRPGにおいて、雑魚戦の役割とは何でしょうか。

いろいろあると思いますが、だいたい以下のような感じでしょうか。

経験値・お金稼ぎの手段

雑魚戦の役割として真っ先にイメージされるのはこれでしょう。

RPGの重要な要素として、キャラクターの成長・強化があります。

経験値を稼いでレベルを上げたり、お金を稼いで装備を購入したりして、ある程度強くなっていなければボス戦を突破できません。その稼ぐ手段としての雑魚戦は、必要不可欠なものです。

古い作品では「経験値稼ぎ」と揶揄されたように、1レベルアップするのに大量の雑魚戦が必要とされ、これが雑魚戦の面倒さや作業感に拍車を掛けていました。

しかしだからと言って、雑魚戦での経験値やお金稼ぎが不要となると、今度は雑魚戦が本当にメリットのない邪魔にしかならず、かえって面倒な作業になってしまいます。

ドロップ品集め

経験値とお金が代表的な戦闘の報酬ですが、それ以外の報酬として敵のドロップアイテムもあります。

アイテム合成のある作品だと合成素材が雑魚敵からのドロップ品だったり、あるいは強力な武器や防具をレアドロップとして落とすこともよくあります。

種などの強化アイテムを落とす雑魚敵を狩りまくるのも、これに当たります。

ドラクエ5のように倒したモンスターを仲間にするというのも、広義のドロップ品集めに相当するでしょう。

ただ、素材やレアドロップを狙って特定の雑魚敵を狩りまくるというのは単純作業以外の何者でもなく、エンドコンテンツでのやりこみ要素ならともかく、ゲーム序盤からそのような要素があると、プレイのテンポを悪くしてしまいます。

パーティーを消耗させる

雑魚戦のもう一つの主要な役割として、パーティーを消耗させることが挙げられます。

ダンジョンの奥でボスと戦うまでに、MPや回復アイテムといった限りあるリソースを削っておくのです。

プレイヤーとしてはボス戦に備えてなるべくMPを温存しておきたいが、通常攻撃だけだと倒すのに時間がかかりHP回復にかえってMPを消費してしまう……、という風にリソース配分を考える必要がありますし、消費を抑えるためなるべく効率の良い倒し方を工夫しなくてはなりません。

これが、ボス戦の前に全回復ポイントがあったり、MPの回復手段が潤沢だったりすると、リソース削りとしての雑魚戦の役割はなくなります。何も考えずただ強力な技をぶっ放していれば済むので、雑魚戦が退屈で面倒な作業になってしまいます。

ボス戦の練習台

例えばダンジョンに3種類の雑魚敵が出てきて、それぞれ毒を使ってくる敵、暗闇にしてくる敵、麻痺させてくる敵がいたとします。そしてそのダンジョンのボスには、これら3つの攻撃手段全てを使わせます。

こうすることでプレイヤーはあらかじめ、毒や暗闇、麻痺でどのくらい困るかやその対処法を予習することができ、いざボス戦になった時も慌てずに対処できるようになります。

また、単純に攻撃や回復でないスキルは、その効能がプレイヤーに伝わりづらいです。雑魚敵にそのようなスキルを使わせることで、どういう効果を持つスキルなのかを分からせることができます。

他にも「試し斬り」の役目もあります。

新しく覚えたスキルを、その威力や効果がちゃんと分かっていない状態で、いきなりボス戦で使うのは勇気がいります。予想よりも威力が弱かったり、思わぬ副作用があったりして、一気に窮地に陥ってしまうかもしれません。あらかじめ雑魚戦で使ってみて効果のほどを確かめる、というのは大切なことです。

世界観の醸成

例えば森のダンジョンでは猛獣や虫系のモンスターが、雪国では氷系の攻撃を得意とするモンスターがよく出現します。

単にマップが森や雪国であるだけに比べて、いかにも森や雪国を冒険している感が演出できるでしょう。

洞窟を抜けて新しいエリアに到達したら今までよりも一段階強い敵が登場したり、ラストダンジョンでボス敵並みに強い雑魚敵が襲ってきたりというのも、広い意味ではこれに当たります。

作品全体としては、ダークな作品はモンスターもおどろおどろしいものになりますし、メルヘンチックな作品はモンスターの絵柄もカワイイものが使われがちです。和風な作品であれば登場するモンスターも日本の妖怪や獣がモチーフになります。

敵キャラのグラフィックは歩行キャラクターやマップのオブジェクトなどと比べると大きくて視覚的にインパクトがあり、中でも雑魚敵は何度も繰り返されることから目に触れる機会も多く、作品全体やそのエリアの雰囲気作りに役立っています。

自分の工夫

以上が自分の考える雑魚敵・雑魚戦の役割です。

私の過去作『小さな大冒険』『天下御免!からくり屋敷』、および現在制作中の『王国の英雄』は、いずれも雑魚戦を重視しており、これらの役割を活かすために不十分ながらも様々な工夫を施しています。

経験値・お金の量

雑魚敵を全て逃げずに倒し、道中の宝箱を全て回収して進むくらいで、ちょうど良いレベルになるように、エンカウント率と経験値・お金の量を調整しています。

すなわち、ただ経験値稼ぎを強いられることもなく、逆に雑魚戦を避けまくっているとボス戦で苦戦するようなバランスを目指しています。

この調整は過去記事「必要経験値をExcelで計算」で紹介したExcelファイルを活用しています。

だいたいどのぐらいの戦闘回数でレベルアップさせるかをベースに、ダンジョンの広さとエンカウント回数、敵キャラの経験値を設定しています。

ただ後半になるほどプレイヤーの腕や進め方による差も拡大するため、中盤くらいまで気を付ければ十分かなとも思います。

『小さな大冒険』の頃はこの辺の調整が甘くて、何度かエンカウント率や獲得経験値の修正を余儀なくされた上、最終的には調整しきれておらず、雑魚戦には課題が残っています。

不可視シンボルエンカウント

過去記事「不可視シンボルエンカウント」「不可視シンボルエンカウント・再」で紹介したように、『天下御免!からくり屋敷』や現在制作中の『王国の英雄』では、シンボルエンカウントではあるものの敵シンボルが普段は見えないという、不可視シンボルエンカウントを採用しています。

シンボルエンカウントの場合は極力エンカウントを避けるのでレベルが上がらず、ランダムエンカウントの場合は迷ったりじっくり探索したりするとレベルが上がりすぎてしまう、という問題があります。

不可視シンボルエンカウントであれば両者のいいとこ取りができ、パーティーのレベルを適正な範囲内に収めやすくなります。

『天下御免!からくり屋敷』では一定時間経つとシンボルが復活するようにしていましたが、『王国の英雄』では一度倒したシンボルはマップを切り替えるまで復活しないようにしたので、同一マップ内ならいくら迷ってもエンカウント回数が増大することはなく、レベルが上がりすぎる事態を避けることができます。

行動パターンで敵に個性を

雑魚敵が様々な攻撃を仕掛けてくるようにして、個性を持たせています。

自分の場合、割と味方専用のスキルになりがちな「かばう」やカウンター攻撃なども積極的に雑魚敵に使わせて、「このスキルはこう使うと強い」というのをプレイヤーに示しています。

注意点としては、あまり1つの敵に行動パターンを多く設定しても、1~2ターンで戦闘が終わるなら、使ってくる行動は数が限られます。

その敵ならではの行動1~2パターンに留めておく方が、特徴が際立つでしょう。

敵グループを豊富に

同じ雑魚敵でも、その数や組み合わせによって戦い方は変わってきます。

自分は敵グループをけっこうたくさん用意します。

1つのエリアに3種類の敵が登場し、全部で1~3体まで同時に出現するとなると、その組み合わせは19通りになります。

これに加えて4体以上出現するパターンもいくつか設定して、自分は1つのエリアに20~30くらいの敵グループを作ることが多いです。

敵グループの構成が同じだと戦い方も同じになるので作業感が増してしまいます。

様々な組み合わせの敵グループを用意して、どの技で倒すのが一番効率が良いか、誰から倒せば被害を最小限に抑えられるかなどを常に考えて戦うようにすれば、雑魚戦にも緊張感が生まれると思います。

雑魚敵の耐久力

プレイヤー側が常に先行して一撃で倒せてしまうと、いくら雑魚敵に個性や特徴を設けても、それを披露する機会がありません。

自分はHPと敏捷性を調整して、魔法使いが先行して全体スキルを放つが微妙に討ち漏らす→雑魚敵が行動する→敏捷性の遅い戦士が通常攻撃で倒しきる、というような流れを意図することが多いです。

こうすることで、雑魚敵が攻撃してくる隙を作りつつも、戦闘自体は1ターンで終われるようにしています。

キャラクターの成長具合にも左右されるので、なかなかピッタリに調整するのは難しいですが、なるべく一発では倒せないようにしています。

町の人に雑魚モンスターを語らせる

過去記事「モブ会話の作り方」でも触れたように、町のモブキャラの会話で周辺に登場する雑魚モンスターの特徴などを喋らせています。

初めて登場する状態異常を使ってくる敵や、不意に強力な攻撃を仕掛けてくる敵など、あらかじめ情報があれば対処も可能ですし、理不尽感もなくなります。

この周辺にはこのようなモンスターがいる、という世界観の提示にも繋がります。

あまり町の一般人が魔物に詳しいと違和感があるので、自分の場合は宿屋に併設された酒場のような施設を作り、そこに冒険者たちを配置して、雑魚敵について語らせるようにしています。

モブキャラの会話は考えるのが苦手という方も多いですが、雑魚敵の特徴を喋らせるだけで数人分の会話が作れるのも良い点です。

これはあまりやっている人がいないので、心からお勧めしたいです。

まとめ

アドベントカレンダーの勢いを借りて、雑魚戦についていろいろ語ってみました。

いずれも全て、個人の見解ですと断っておきます。

雑魚戦ごときにいちいち頭を悩ませたくない、最強スキルで一掃できれば十分だ、という意見の方もいらっしゃるでしょう。

ただそれであれば、いっそ雑魚敵など無くしてしまって、ボス戦だけで十分な経験値が得られるようにすればいいのでは、とも考えます。

このゲームの中で雑魚敵・雑魚戦とはどのような役割を持つのか、ということを意識せず、ただ何となくRPGだから雑魚戦があるというだけで作られた雑魚戦は、退屈なものになりがちです。

ぜひその辺をしっかりと意識して、雑魚戦を設計してもらいたいと思います。

それでは最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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