本記事は「ツクールアドベントカレンダー Advent Calendar 2023」12月5日分の投稿記事です。
はじめに
RPGツクールシリーズにはユーザー間でノウハウの質問や相談を行えるサイトがいくつかあり、公式の「ツクールWebフォーラム」や非公式の「ツクマテ」が代表的なサイトです。
公式のツクールフォーラムは私も登録していて、そこそこの頻度で書き込んでいます。ツクマテの方は登録はしていないのですが、そこに挙がっている質問は参考として読んでいたりします。
私は基本的に質問に対する回答者の立場となることがほとんどですが、挙がっている質問を見ていると、回答する気の失せるような質問も散見されます。
しかし多くの場合は、悪意を持って回答者を困らせてやろうとしているわけではなく、どういう風に質問したらいいか分からない、何が分からないのか自分でも分かっていない、という状態なのだと思われます。
そこで今回は、どういう風に質問したらいいか、どういう質問をしたら回答がされやすいかを、回答者側の観点を交えて解説したいと思います。
けっこう長文になりますが、お付き合いください。
なお最初に断っておきますが、以下はあくまで個人の意見です。
回答するにも時間がかかる
まず最初に質問者に分かってほしいのは、回答するにはそれなりに時間がかかるということです。
質問者の意図を理解して、実装方法を考えて、多くの場合は実際に自分で試しに組んでみて、エラーが起きないか、想定外のことはないかなど検証もしてから、質問者のレベルに応じて理解しやすいように文章を工夫しつつ回答を作成します。
簡単なものでも30分~1時間くらいかかります。難しいものだともっとかかりますし、1回で解決せず2回3回とやり取りが続くことも珍しくありません。
それだけ回答するのも大変な作業ですが、特に回答することによって報酬が発生するわけでもありません。
それなのになぜわざわざ回答するのかというと、より多くの作品を完成に導いてツクール界隈を盛り上げたいとか、ツクール界隈で技術力のある人として認知されたいとか、ついでに自作品の宣伝をしたいとか、高尚な思いから下賤な気持ちまで、様々な思いがあります。
忘れないでもらいたいのは、回答者は
- 無報酬にもかかわらず
- それなりの時間を割いて回答している
という点です。
それだけに、徒労になるようなやり取りは避けたいものです。
やりたいことを具体的に書こう
徒労を避けるために、回答者から質問者にいちばんお願いしたいことは、やりたいことを具体的に書いてほしいということです。
どういうことか、もう少し具体的に説明します。
作りたいものをストレートに書こう
例えば「属性有効度が0%の相手にも属性攻撃が当たるようにしたい」という質問があったとします。
この質問だけを見ると、「属性有効度を0%にしなければいいのでは?」としか思えません。
おそらくそういうことではないのだろうと推測はできますが、詳細が分からないので回答のしようがありません。
もっとストレートに「最初は炎耐性があるが、特定のアイテムを使うとバリアが剥がれて、炎攻撃が通るようにしたい」と書いてくれれば、「戦闘開始時にバトルイベントで炎属性0%のステートを付与して、アイテムの使用効果でそのステートを解除すればよい」と答えられます。
そうではなく「普通の炎攻撃は当たらないが、特定の炎スキルだけは当たるようにしたい」ということであれば、「炎属性を通常と特定スキル用の2つに分けて、普通の敵は2つとも同じ有効度を設定、耐性のある敵だけ炎(通常)は0%にして炎(特定スキル用)を100%にする」といった解決策が考えられます。
このように同じ「属性有効度が0%の相手にも属性攻撃が当たるようにしたい」という質問でも、実際に実現したい内容によって全く違う解決策となります。
具体性のない質問だと、何をやりたいのか要領を得ない質問になりがちで、結果として以下のような事態を招きます。
- 詳細が分からないのでそもそも回答がもらえない
- 回答者が具体的な仕様を推測することになり、質問者にとって的外れな回答が返ってくる
- 回答者が複数の仕様を検討するという労力を強いられる
どんなスキルを作ろうとしているのか、どんな演出をしようとしているのか、具体的な活用イメージがあれば、それに沿って解決策を考えることができます。
量の観点は重要
前述の、属性バリアを剥がす話が、特定のボス戦だけの話であればいいのですが、通常の雑魚敵でもそういう敵がたくさんいる、しかも敵によって対象の属性も様々、という話であれば、全ての敵グループのバトルイベントで戦闘開始時に属性0%のステートを仕込むのは現実的ではなく、プラグインの導入を検討した方がいいかもしれません。
また属性を通常と特定スキル用の2つに分けるケースも、対象となる属性がいくつもあって、敵キャラも何百体いて、全部に設定するのが大変という話であれば、やはりプラグインを検討した方がいいかもしれません。
このように、特定のケースだけで必要になるのか、普遍的に必要なのかによって、デフォルトの機能を駆使すればできるのか、プラグインに頼った方がいいのかは異なります。
頑張ってプラグインを作ったのに、実は必要になるのは1回だけで、少し工夫すればデフォルトの機能だけで行けたというのでは、徒労になってしまいます。
逆に、せっかくいろいろ検証してデフォルトの機能だけで実現する方法を説明したのに、「その方法は知ってるがたくさんあって大変なのでプラグインをお願いしたかった」と質問者から言われたら、回答者としては「それならそうと初めから言ってほしい」という気持ちになります。
このように、量の観点は思わぬ誤解を招くものです。
基本的にケースが限定されていればいるほど、想定すべきことが減るので、作りやすくなります。
- 特定のシーンだけで必要なのか、多くのケースで必要なのか
- 対象は1つだけなのか、2~3個なのか、たくさんあるのか
- 対象は敵だけなのか、味方だけなのか、両方なのか
- ボス敵だけなのか、特定のアクターだけなのか、不特定多数なのか
といった情報を入れると、回答者側も考えやすくなってありがたいです。
丸投げの質問はやめよう
回答者に敬遠される質問の代表は、自分では大して何も考えずに、質問を丸投げされることです。
「アイテム合成システムの作り方を教えてください」とだけ質問されても、「アイテム合成」でイメージされるシステムの詳細な仕様は千差万別です。
合成施設があるのかメニューから合成できるのか、合成アイテムの設定方法は、合成画面のレイアウトは……など、少し考えても様々な要件が存在します。
そういうものを全てスルーして、ただ「アイテム合成システムの作り方を教えてください」とだけ書かれると、「この人は自分で何も考えてないんだな」という印象になります。真面目に作る気がなさそうだと考えて、こちらもスルーします。
まずは自分で検索しよう
まずは質問以前に、自分で検索などしてトライしましょう。
少し検索すればすぐに答えが見つかるようなことを質問されると、回答者としては
- 右も左も分からない初心者、かつ自分で少しは考えようという気持ちがなさそう
- そんな人には一から十まで懇切丁寧に書く必要があって大変
- 今後も少し詰まるたびに質問しまくるのだろうか
- そんな調子ではまずゲームなど完成しそうにない
- だとすると自分が手取り足取り教えたところで徒労に終わる可能性が高い
と考えて、スルーしたくなります。
前述のアイテム合成システムであれば、Googleで「ツクール アイテム合成」などと検索すれば、いくつかプラグインや解説ページがヒットします。
それ以外でも、「ツクール」とスペース(空白)に続けて求めるシステムの名称を入れれば、たいてい解説ページやプラグインページが1つ2つヒットします。
それをもとに、「試してみたけどうまくいかなかった」「設定方法がよく分からなかった」「この動作が希望と違うので変更したい」などと質問すべきです。
もしそれっぽいページが見つからなかった場合は、「○○というキーワードで検索してみましたが見つかりませんでした」などと書くといいでしょう。
自分で試したことは書こう
実装するにあたって、既に自分で試してみたことがあれば、ちゃんと書くようにしましょう。
「ここまで既にできているのであれば、後はこれだけ教えれば済む」という方が、ゼロから回答するよりも、回答する側としては楽です。
また「実装方法としては何通りか考えられるが、この方法を試しているのなら、それを改良したこの実装方法を教えよう」というケースもあります。
「この方法を試してみたが、こういう理由でダメだった」というのが書かれていれば、同じ轍を踏まずに済みます。
全く手がかりがなく、どこから考えればいいか分からない、ということであれば、その通りに「どこから考えればいいか分からなかった」と書きましょう。
少なくとも丸投げでないことは分かりますので、どこから考え始めればいいか、どういう方針で実装すればいいか、アドバイスできると思います。
何がどううまくいっていないのかを書こう
よく「プラグインを試してみましたがうまくいきませんでした」とだけ書かれていて、何のプラグインを使ったのかも分からなければ、どううまくいっていないのかも分からないことがあります。
一口に「うまくいかなかった」と言われても、何も変化がなかったのか、エラーが出たのか、動くけれど意図した動きと違うのかによって、対処法は異なります。
- 何というプラグインを
- どのように設定して
- このようになったが
- 意図しているのはこういう動きである
というポイントを押さえて書いてもらえると、回答しやすくなります。
特に「変になった」とだけ書かれていて、どういう状態が正常なのか分からないことがよくあります。求めている状態は何なのかを、できるだけ言葉にして記述するか、言語化が難しければ絵に描いて画像を添付するなど、工夫してみましょう。
また場合によっては、単純な設定ミスや入力間違いでうまく動いていないだけかもしれません。イベント内容やプラグインの設定画面のスクリーンショットがあると、より確かな回答ができると思います。
プラグインのエラーの場合
エラー系の質問では、原因がプラグインの設定間違いや不具合、プラグイン同士の競合にある場合がほとんどです。
- そのプラグインをOFFにした状態では正常に動作するのか
- 他のプラグインをOFFにしたら正常に動作するのか
といった検証は質問者自身で行ってもらう必要があります。
そもそも何のプラグインをどう使っているかは質問者にしか分からないので、回答者側では検証のしようがありません。
他のプラグインを1つずつOFFにしていって、このプラグインがOFFの場合はうまくいくという時は、そのプラグインとの競合が原因として考えられます。
1つ1つプラグインのON/OFFを切り替えて試すのは、導入しているプラグインの数が多いと大変ですが、全く関係のないプラグイン同士が競合することは考えにくい(皆無ではない)ので、戦闘中における不具合なら戦闘システムに関わるプラグイン、メニュー画面における不具合ならメニューUIに関わるプラグインといった風に、関連するプラグインから優先的に調べていけば、比較的簡単に原因を特定することが可能です。
たまに、明らかに特定のプラグインに起因するエラーなのに、何のプラグインかが明記されていない質問がありますが、論外です。
必要な情報は全て書こう
前提として、回答者は質問者のことを知りません。
- 全くの初心者なのか、ある程度慣れた人なのか
- どのような制作環境なのか
- どんなプラグインを導入しているか
- どのようなゲームを作っているのか
といったことは基本的に分からないので、必要であれば書くようにしましょう。
自分の技術レベルは伝えよう
質問者の技術レベルは、回答者にとって気になるところです。
そのレベルによって、どこまで丁寧に説明しなければならないか、どのくらいは知識として持っている前提で説明してよいかが分かるからです。
せっかく回答したのに質問者にとって難しすぎて全然活用されなかったり、イチから丁寧に説明したのにそれは質問者にとって分かりきったことだったりしたら、せっかく割いた時間が無駄になってしまいます。
質問者の技術レベルが不明だと、自分の回答が徒労に終わる可能性もあるため、回答を避ける傾向にあります。
「ツクールを触って1週間です」「チュートリアルはひととおりやってみました」「他人のプラグインの一部修正はできるレベルです」「ツクールは初めてですが仕事でJavascriptは触ったことがあります」など、自分のレベル感を示す一文が前置きとして入っていると、回答者側はありがたいです。
ツクールのバージョンは明記しよう
けっこう忘れられがちですが、RPGツクールMZなのか、MVなのか、はたまた違うバージョンなのか、ということです。
公式フォーラムやツクマテは、MZ、MV、その他バージョンで分かれているので、それで十分と思われがちですが、特に公式フォーラムは新着情報のところから見ることも多く、注意しないとMZかMVかを見落としてしまいます。
MZ/MVは共通して動作することも多いですが、UI関係やアニメーション系は相違点も多く、MZのつもりで対応したら実はMVだったとか、その逆とか、せっかくの回答が無駄になったら徒労感も大きいです。
なるべく質問本文に、ツクールのバージョンは明記するようにしましょう。
回答をもらったら感謝と報告
最低限の礼儀として、回答をもらったらお礼はしましょう。
すぐに回答内容を試せるようなら、試した結果を報告するとともにお礼をしましょう。すぐに試せない時は、いったんお礼だけ述べて、後で試してみる旨を書くようにしましょう。
一般のビジネスマナーと同様、なるべく回答をもらってから24時間以内には、何らかの反応を返すのが望ましいです。
回答者は、回答しっぱなしではなく、
- この内容で質問者が理解できたかどうか
- この回答が質問の意図と合っているかどうか
- この回答に沿って試してうまくいったかどうか
を非常に気にしています。
せっかく時間をかけて質問に答えたのに、何も反応が返ってこないでは、回答者としてはとても虚しい気持ちになります。
回答がもらえているのに、お礼どころか何の反応も返していない質問者は、二度と回答してもらえることはないでしょう。
自己解決した場合も解法を書こう
質問して回答を待っている間に、自分でやり方を思いついたとか、他の方法を試したらうまくいって、自己解決したということもあります。
そのような時によく、「自己解決しました」とだけ報告して終了されていることがありますが、非常にもったいないと思います。
自分が行き詰まって質問した内容ならば、他の人も同じように行き詰まっているかもしれません。そんな時に、どのようにやってみてうまくいったのかが書かれていれば、その人の助けになります。自分が回答者になれるチャンスなのです。
自己解決した場合でも、どう解決できたのかを書くようにしましょう。
まとめ
まとめると、以下のような質問には回答が付きにくいです。
- 具体性に乏しく要領を得ない質問
- 自分で試してみた形跡のない質問
- ただうまくいかなかった、エラーが出たとだけ書かれて詳細がない質問
- 過去に回答をもらっても何も反応していない質問者
逆に以下のようなことを意識して質問してもらえると、回答者側としても回答しやすくなります。
- 自分の技術レベルやツクールのバージョンを記載
- まずは自分で検索・試行・検証してみる
- 作りたいものをストレートにかつ詳しく書く
- 特定のケースの話なのか不特定多数の話なのか
- 求める状態と現在の状態を書く
- 回答をもらったら感謝と結果の報告
あまりこういう口うるさいことは言わないようにしているのですが、なかなかこの手のことは教えてくれる機会もないですし、今回はアドベントカレンダーということで、敢えて書いてみました。
質問者の方にとっては、質問の際にどういう情報を書けばいいのか、分かるように解説したつもりです。
回答者の方にとっても、詳しい内容をヒアリングする際の参考資料になるのではないかと思います。
健全なフォーラム運営がなされて、ツクール界隈の健全なる発展に、少しでも協力できれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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